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創元推理文庫の『Fate/Grand Order』帯採用に出版業界の希望を見るよ。

創元推理文庫と『Fate/Grand Order』に関する記事のアイキャッチ画像。

◆「あの」創元推理文庫が『FGO』を帯に採用!


 かの創元推理文庫が『Fate/Grand Order』のキャラクターを活用した帯を採用したという話。いまさらかもしれませんが、凄い。素晴らしい。

 

 おそらく、いま『FGO』をプレイしているような若者たちにとっては「お堅い古典」に過ぎないだろう『吸血鬼ドラキュラ』や『フランケンシュタイン』をこのような手で売り込もうとは。

 

 さすが創元! おれたちにできないことを平然とやってのける。そこにシビれる! あこがれるゥ!

 

 いやまあ、このやり方でほんとうに古典が売れるのかどうかはわかりませんが、それにしてもこういう方法論にチャレンジしようということそのものが素晴らしい。

 

 それにしても、TYPE-MOONの影響力がここまで来たと思うと感慨無量ですね。『月姫』から延々と追いかけているわけで、少しずつ少しずつ影響力を増していった結果、とうとうここまで来てしまったかと思うと、不断の努力の大切さを思い知らされる気がします。

 

 が、話を戻しましょう。若者たちにとっては「読みづらいクラシック」であるに過ぎないであろう『ドラキュラ』や『カーミラ』がほんとうにこういうやり方で読まれるのか?

 

 どうもこれが、読まれるらしいんですよね。ええ、キャラ萌えの力というものは恐ろしいものがありまして、どう考えても若いオタクにウケるとは思われないこういう作品が、ちゃんと売れているんですよね。

 

 じっさい、このインタビューのなかでもこのように語られています。

 

――これまで、東京創元社さんの本の売れ行きが「FGO」の効果で伸びたことなどはあったでしょうか。

 

 2年ほど前に紀伊国屋書店新宿本店さんで独自に展開されたFGOのフェアでは『吸血鬼カーミラ』など、弊社の書籍も展開していただきました。その際に追加発注もいただき、FGOプレイヤーの方の原典への興味の強さを感じました。他にも、ホームズが活躍したシナリオでは、ホームズ作品だけでなく、古典翻訳ミステリの売れ行きが伸びました。シナリオの内容に触れるので詳しくはご紹介できませんが、翻訳ミステリで有名な探偵が多数登場しており、興味を持ってくれた方々が手を伸ばしてくれたのではと考えております。

◆古典に通じる「回路」を作ることが大切。


 『シャーロック・ホームズ』はともかく、『ドラキュラ』あたりは意外と本編は面白くないともいわれているのですが(本編のドラキュラにダークヒーローの格好良さはないのです)、まあ、それも読んでみてこそいえること。こういう何かのきっかけで名作に触れることは良いことだと思います。

 

 クラシックエンターテインメント小説を扱うことにかけては日本一の創元推理文庫がこういう試みに着手してくれたことは嬉しいですし、素直に賞賛したいところですね。

 

 そういえば、復刊事業を専門に行う「復刊ドットコム」の担当者がインタビューで、女性やソシャゲユーザーはお堅い専門書を読んだりしないだろうという趣旨のことを述べて、批判を集めた事件もありました。

 

 これは批判を浴びて当然だろうとは思いますが、じっさいのところ、そういいたくなる気持ちはわからなくもありません。まさか『FGO』のような現代的なゲームのユーザーがガチガチの専門書を購入し、あまつさえ読むとは思わなかったのでしょうね。

 

 しかし、事実として、どうやらその「まさか」のほうがほんとうらしいのです。『艦これ』で戦艦マニアになってしまった人がいるように、何かきっかけさえあればディープな世界に足を踏みこんでいく人もいるということ。

 

 そして、そのきっかけとして最もふさわしいのは「キャラクター」であるということがいえそうです。キャラクターの力とは偉いもので、現代ふうにリファインしさえすれば、ドラキュラやホームズといったキャラクターたちの魅力はまだまだ通用するのですね。

 

 そして、いったんそのジャンルに惹かれさえすれば、読者は案外とむずかしい本でも読んでくれるものらしいのです。

 

 ここにちょっとした希望を見て取ることは間違えてはいないでしょう。いまや風前のともし火とも見える読書文化を守るためには、「その作品の面白さ」に通じる「回路」を作ってやる必要がある。

 

 逆にいえば、その「回路」さえあれば、そういう作品はちゃんといまの世の中に通じるものを秘めているということだと思うのです。作品の力を信じることからすべては始まる。そして、何かしら「そこへ通じる入口」を作ってやることが大切だということですね。

 

 そういう意味で、『FGO』は意外なほど偉大なのかもしれません。いや、むしろ「遊び」と「物語」の力は偉大ということでしょうか。これからも『FGO』に注目だ!

 この記事を書いている人:海燕(かいえん)

 

 プロライター。7月30日生まれ。2001年1月1日からウェブサイトをオープン。その後身のブログは1000万PVを記録。その後、ニコニコ動画にて有料ブログ「弱いなら弱いままで。」を開始、数百人の会員を集める。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を見るまでは死ねないと思っている、よくいるアラフォー男子。

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